新たに約68億円の株式を購入
暗号資産(仮想通貨)業界ベンチャーキャピタル大手Paradigm(パラダイム)は9日と10日、米大手仮想通貨取引所コインベースの株式を追加購入した。約68億円(約5,000万ドル)相当を投資した形だ。
パラダイム共同創設者のFred Ehrsam氏が11日、この株式購入について米国証券取引委員会(SEC)に報告書類を提出している。Ehrsam氏はコインベースの共同創設者でもあり、現在コインベースの取締役会にも所属している人物だ。
今回パラダイムは、コインベースの株式81万株を、平均価格61ドルで購入。提出書類によれば、パラダイムの2つの事業体、パラダイム・ワンLPとパラダイム・ファンドLPは現在、合計450万株のコインベース株を保有している。
ECとの訴訟でコインベースを支持
株式購入に加えて、パラダイムはSECとの間の訴訟についてもコインベースの立場を支持している。10日に法廷助言書を提出した形だ。
背景として、コインベースは4月にSECを相手取って限定的な訴訟を起こしている。同社が2022年7月にSECに提出した「仮想通貨業界に関する規制の明確化を求める署名文書」への回答を要求する内容だ。
パラダイムはコインベースに賛同して、「SECによる規制整備が遅れていることで、仮想通貨市場に不確実性が存在している」と指摘。次のように批判した。
SECは、仮想通貨や仮想通貨取引プラットフォームについての明確なルールやガイダンスを提供していない。それにもかかわらず、仮想通貨企業に対する強制措置を取り続けている。
さらに、SECはコインベースが提出した規則制定の請願書への回答さえ拒否しており、これによって司法審査を回避し、規制上で不確実な状態を長引かせている。
また、SECは仮想通貨企業に対して、その事業などを登録するよう述べる一方で、そのための道筋を示していないとも申し立てている。
この訴訟については米国の控訴裁判所が5日、コインベースが提出した請願に回答するようSECに命令したところだ。SECは10日以内の返答を求められているものの、返答までの時間延長の権利や、コインベースの提訴却下を裁判所に求める可能性もある。
関連:米控訴裁判所、コインベースの請願に回答するようSECに命令
法廷助言書(Amicus Brief)とは
米国の法廷における制度。裁判当事者以外の第三者が、公式に意見書を提出することを可能にするもの。その内容は裁判で考慮される。
▶️仮想通貨用語集
業界団体CCIも法廷助言書提出
パラダイムの他、仮想通貨業界団体「Crypto Council for Innovation(CCI)」もコインベースを支持する法廷助言書を提出。
CCIは、SECによるガイダンスは限定されており「曖昧で一貫性がなく、業界にとって実行不可能なもの」だと述べており、次のように述べている。
ガイドラインを提供せず強制措置によって取り締まることで、SECは企業が政府機関の意思決定に有意義に関わっていくことを妨げている。何が許容されるかについて市場参加者に公正な通知を行っておらず、イノベーションや仮想通貨への投資を萎縮させる。
企業が、コンプライアンスを可能にする枠組みの中で活動できるためには、明確で一貫したガイダンスが必要だ。