ステーブルコイン法案の最新版
米下院金融サービス委員会は8日、パトリック・マクヘンリー議員らによる超党派ステーブルコイン草案の、3回目の修正版を公開した。13日に下院で審議される予定だ。
同委員会によると、この法案は共和党と民主党の立場を和解させるような調整が加わっており、共和党議員らからの追加コメントにも対応している。
今回のバージョンでは、ステーブルコインの発行要件を策定する主要な規制当局として米国連邦準備制度が挙げられた。また、州の規制当局がトークンを発行する企業を監督できるようにすることは前回の草案から変わっていない。
連邦準備制度には、緊急の際に国が規制するステーブルコインの発行事業者に対して介入する権限などが与えられた。各州は、その監督義務を連邦監視機関に移管することも可能だ。
もし今後議論が進み、上院下院両方で可決されることがあれば、米国で初めてステーブルコインについての包括的な法案が誕生することになる。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値($1)を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
草案の内容
草案には決済用ステーブルコインの発行者の定義や、ユーザーからのステーブルコイン換金要請に関する規定、ステーブルコイン発行者のライセンス申請手続きなどが盛り込まれている。
4月にも、この法案について公聴会が開催されていた。
その際に、超党派で意見が一致したのは、ステーブルコインは「証券か商品(コモディティ)か」という定義をめぐる論争からは外れる可能性が高いことや、米国の決済システムを進化させる可能性があることである。
民間の暗号資産(仮想通貨)については、米証券取引委員会(SEC)が、大半の仮想通貨は「証券」にあたるとして、コインベースやバイナンスを「未登録証券を提供」したとして提訴している状況だ。
今回の案では、中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタルドルがもたらす恩恵に関する研究を進めるという条項は削除されていた。
共和党議員の一部からは、過去に、CBDCは連邦政府が米市民の金融活動を監視するツールになり得るとして反対する声も挙がっていたところだ。
CBDCとは
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
13日に公聴会
13日の公聴会では、ステーブルコイン草案に加えて、マクヘンリー議員が別途進めている、仮想通貨規制を明確化する法案も議題となる。
米サークル社のジェレミー・アレールCEO、アバランチ(AVAX)を開発するスタートアップ企業Ava Labsのエミン・グン・シラーCEO、全米先物協会のトーマス・セクストンCEO、Steptoe&Johnson法律事務所のコイ・ガリソン パートナーなども証言を行う予定だ。